2019-08

2019-08-28
『希望的なビジョンを話さない』

こんにちは。
理念浸透コンサルタントの松本です。

武蔵境自動車教習所へ取材での気づき、
第二弾です。

自動車教習所の事業は、業界としてどうなっていくのか、
全く予想できません。

高橋会長は社内メンバーへ、

「自動車教習所は10年後に廃業します。
 これからはサービス業を中心に経営していきます」

と宣言しています。

これから入社してくる新入社員にも
同様のことを伝えています。

「教習所業はあと10年で廃業します。
 しかし皆さんの人生は守ります。
 やりますか?やりませんか?」と。

セオリーで言えば、
社長は希望的なビジョンを描き伝え、
ワクワクさせることが役割。

でも高橋会長は正直に
「10年後はなくなる」と言っています。

東京で2位、全国で3位の入所者であろうと
なくなると。

未来に起こりうる現実を伝える。
偽りの希望的なビジョンではなく、
正直で現実的なビジョンです。

それでも入社してくるスタッフがいます。
会社に惚れて入ってくるに違いありません。
何をやるかではなく、誰とやるか。

10年後の廃業宣言をすることによって
新規事業の立ち上げを加速化させることも
できるともおっしゃっていました。

現在の主事業で働く従業員を確保する新規事業を
10年で作り上げていくというのは、
本当に覚悟がいる宣言だと思います。

正直で現実的なビジョンを伝えること。
これも社員への「愛情」なのではないでしょうか。

 

2019-08-22
『自己矛盾の判断をしない』

こんにちは。
理念浸透コンサルタントの松本です。

先般、武蔵境自動車教習所へ取材に行ってまいりました。

自動車教習所は、
人口減少、車離れ、自動運転化などを踏まえると
事業を成り立たせるのが非常に難しいと感じました。
マーケットはピーク時の4割です。

そんな厳しい環境の中でも
東京で第2、全国で第3位の入所者が来られています。
(※約7000名/年)

顧客満足度も高く紹介率は50%です。

顧客満足、社員満足、地域社会貢献の3本を軸に
長年コツコツと様々な活動をされてきました。

高橋会長が社長を引き継がれた際、
想像以上の労使紛争に巻き込まれ、
会社をたたむか、継続するか、
苦難の連続だったと言います。

今となっては、業界内外から注目される企業に
まで変わりました。

高橋会長は
「経営者は自己矛盾を起こしてはいけない」
とおっしゃっていました。

ある時、組織を作っていく際、
多くの幹部は人件費の観点もあり
「派遣で賄おう」という選択をした。

でも高橋会長としては
「やっている仕事も同じなので、
 なぜ派遣なのか?安心して働くこともできない。
 社員ではないのか?」と思われたそうです。

結局問題が起きてしまい、
数年後に派遣社員をすべて正規社員に
切り替える決断をしました。

正規社員の割合が増えて人件費も増えたが、
それ以上に売上も利益も向上したそうです。

これは一つの例ですが、
経営者は何が正しいかを知っている。

自然の摂理で考えれば、原理原則で考えれば、
Aが正解だと知っている。

でも他の事情を踏まえて
Bを選択する経営者がいる。

本当はAがよいのにBを選択する。

この時に自己矛盾がおきます。

経営者の心の中で自己矛盾を起こしていれば、
長期的に上手くいくはずがない。

法政大学の坂本教授は、
「損得ではなく善悪での判断」
「正しい経営」とおっしゃっています。

自己矛盾を起こしていないか、
自分の理性や良心に正直な判断をしているか。

判断する前に、立ち返りたいですね。

 

2019-08-14
『研修には綺麗ごとが必要です』

こんにちは。
理念浸透コンサルタントの松本です。

先日、福祉関連の研修を受講しました。

テーマは虐待防止。
1年に1回は受講するように義務づけられています。

運営側は利用者さんが何か事故に巻き込まれたり、
トラブルを起こしてしまうことを恐れます。
責任問題にまで発展しますから。

自然と安心・安全の観点で「管理」的側面が
増えていきます。

すると利用者さんとしては、
束縛されている感覚を持つ。自由がないと感じる。

一人の人間として、
権利擁護ができていないと判定されるかもしれません。

逆に一人ひとりの自由意志を尊重すると、
運営側はリスクを追うことになる。

毎日トラブル対応、イレギュラー対応で
職員は疲弊するでしょう。

この狭間でどこの施設も闘っているかと思います。

当然、研修の内容は理想論的な話になります。

グループワークをやると
「そんなに簡単にできたら現場は苦労しない」
と愚痴がよく出てきます。

研修は理想論でもいいと私は考えます。

なぜなら理想論が語られないと、
現場の事情を言い訳にして、
現状から何も変わらないからです。

「今の現場はそうかもしれないけれど、
 理想は◯◯だよね?
 今のままだと良くないよね?」

と自己矛盾を起こすこと。

そして自己矛盾を少しでも解消するために、
少しでも改善するアクションを起こす。

研修は自己矛盾を起こすこと。
これも大きな役割ではないでしょうか。

 

2019-08-08
『指示・命令欲求を持っている?』

こんにちは。
理念浸透コンサルタントの松本です。

新しい期を迎え、T社では経営者が代わりました。

以前の経営者は、どちらかという指示命令型。

非常に能力の高い方なので、先回りをして
ゴールとそこにたどり着くための
プロセスを描くのが得意です。

答えを自分で持っていて、
それを社員に遂行させていました。

社員Yさんとしては自分で遂行している感覚がなく、
モチベーションが高いとは言えませんでした。

「もっと自由に仕事がしたい。
 管理されずにのびのび仕事がしたい」

と話されていました。

新しい経営者は異なる自律自走型のスタンスを取ります。

社員自ら考えて、物事を進めてほしいと伝えます。

ときにはゴールを描く手伝いはするが、
プロセスは自分で考え抜いてほしいと。

社員Yさんは、

「新社長になって自由度が増す。
 これから仕事が楽しくなる」

と言われていました。

しかし3ヶ月後、Yさんの様子を聞くと
非常にパフォーマンスが低いとのこと。

最近は、

「もっと具体的に指示を出してほしい。
 指示を出してくれないと動けない」

と言われているそうです。

面白いですよね。

指示命令型の社長のときは、
「もっと自由に、創造的な仕事をしたい」と
言っている。

でもいざ自律自走型の社長になったら
「もっと具体的に指示を出してほしい」
と言います。

「誰しも管理されずに自由に仕事がしたいはず」と
思っていた時がありました。

でもそうではなく、

「指示されることが好きで、
 指示があった方が安心して動ける。
 自由が怖いという人もいる」

と考えるようになりました。

とくに指示命令型の上司の下、
何年も働いていると「自分で考える力」さえ
失われていきます。

考える力が失われた状態で、
「あなたの自由にやりなさい。
 創造性を発揮しなさい」
と言われるのは酷なのかもしれません。

潜在的に
「指示命令を望んでいる人もいる」
と考えたほうがいいかもしれません。

 

2019-08-03
『サラリーマンの特権を使う』

こんにちは。
理念浸透コンサルタントの松本です。

先日、経営者Aさんと話していて
ハッとしたことがあります。

その方は40歳で数十億規模の会社の代表をされています。
25歳で企業されているので15年近く経営者経験があります。

Aさん:
「松本さんは起業される前、
 サラリーマン経験はどれくらいありますか?」

松本:
「私は10年くらいですかね」

Aさん:
「それは羨ましい。
 サラリーマン時代の後悔ってありませんか?」

後悔?

私は答えがすぐに出てきませんでした。

Aさん:
「サラリーマン時代でないと経験できないことって
 あるじゃないですか。
 私はサラリーマン経験は3年くらいしかないんです。
 いま思い返せば、この3年間をもっとフル活用して
 おけばよかったと後悔しているんです」

松本:
「どのような後悔ですか?」

Aさん:
「だってサラリーマンってお金もらいながら、
 いろんな勉強ができるじゃないですか。
 もっといろんなことにチャレンジして
 失敗しておけばよかったと思うんです。
 失敗しても会社が最終的に責任を追ってくれる。
 代表となった今ではそれができない。
 サラリーマンという特権を使って、
 もっと経験値を積み重ねることが
 できたと思うんです」

なるほどなと思いました。

言われてみれば、
20代の私が目の前にいるならば、

「会社をフル活用してもっと成長しなさい。
 失敗したって会社があなたを守ってくれる。
 失敗の数はあなたの財産になる」

とアドバイスをするかもしれません。

自分がサラリーマンだった時は、
このような特権まで考えられていませんでした。

むしろ組織内のしがらみや制約条件が多くて
自由にできない「窮屈さ」ばかり感じていました。

でも冷静に振り返れば、
自由がなかったというよりも、
自由にチャレンジする権利を
放棄していたのではないかと思います。 

今、置かれている環境に
不満を持っている人も多いでしょう。

見方を変えて、
この環境だからこそできることにも
目を向けてみてください。